女性の品格とは? 傑作(0)
2007/6/13(水) 午前 5:56
生き方についてその他人文科学
問 『女性の品格』を書こうと思われたきっかけから聞かせてください。
坂東さんから見て、昔の日本女性、あるいは世界の女性と比べて、
今の日本女性には問題があるということですか。
答 女性が社会で活躍することは大事なことですが、今バリバリ働いている女性を見ると、
違和感を覚えることがあるんです。
男性と同じように「勝ち組」を目指して、出世や権力、収入ばかりを目標とする人が多い。
私たちの世代が女性差別撤廃だの女性の社会進出だのと言ってきたのは、
こんな女性を増やすためだったのか、と残念な気持ちになります。
女性には、従来の会社人間の枠にどっぷり浸かった男性の権力志向や拝金志向とは違う、
新しい価値観を日本の職場に持ち込んでほしいという思いがある。
もう1つ、昔は女性の教育の目標として「良妻賢母」のような理想像がありましたが、
そんな時代ではなくなりました。
社会進出に伴って女性のあらまほしき姿が見えなくなり、スタンダードがなくて
迷っているのではないだろうかという思いもあって、装いや言葉遣いなどのハウツー的なものから
行動規範のような概念まで盛り込んだ現代女性の理想像を本にまとめてみようと考えたのです。
ロールモデルよりも品格が大切
問 確かに働く女性の問題を取材すると、必ずロールモデルがないと言われます。
それでもタイトルが働く女性のロールモデル云々ではなく、あえて品格としたところが面白いですね。
答 お金や出世といった職場での成功がすべてではない、人間としての器量、
成長を重んじなければならないという思いを込めたつもりです。
タイトルは女性の品格ですが、男性も同じですよね。
うまく社内を泳いで、時々の権力者に取り入ることだけで出世していく人は、
男性の目から見ても魅力がないでしょう?
それよりも人間として度量が大きくて、自然と頭が下がる人の方がずっと魅力がある。
女性にも、そうした品格のある人を目指してほしいと思います。
問 今は男勝りに猛烈に働く女性と補助的な仕事で満足している昔風の女性に
2極分化している気がしてなりません。
答 バランスが取れた女性が少ないことは確かですね。
やはり働く女性にとって、子供が産まれた時に仕事と子育てを両立させる体制が
整っていないという問題が非常に大きいのだと思います。
出産から10年くらいは、いわば「ペナルティーボックス」にいるような、
まともに戦えない時期があるけれど、子供が大きくなれば再び戦線に復帰できる仕組み、
体制があるというのが理想ですね。
子育ては人を成長させますから、復帰後、優れたリーダーになる可能性だってあるんです。
昔なら、お前が好きで産んだんだから、自分の責任で何とかしろと言われましたが、
少子化ショックもあって、企業も少しずつ変わりつつあるのかなと思います。
企業が教育を放棄して大学の役割が大切に
問 企業も人を大切にする経営を思い出したのでしょうか。
バブルが弾けて、日本の企業は人を大切にする経営から切り捨てる経営に舵を
切ったように思えてなりません。
日経ビジネスではその問題点を書いてきました。そういう企業は必ずしっぺ返しを受けると。
答 米国の悪しき部分を真似てしまった結果ですね。
日本企業は本当に人を育てなくなりました。短期で雇い入れるいわゆる非正社員は当然、
教育もしない。
社会人の教育は、ここ10年足らずの間に急速に失われました。
あまりに急に失われたせいで、企業が事の深刻さを理解していないのではないかと心配になります。
大学の立場からすると、昔は日本の企業に教育力があったから、大学は遊んでいられた。
ところが企業が教育できなくなった今、大学に期待される役割が再び大きくなっているんです。
問 今の日本にとって、教育改革は本当に大きなテーマですね。
答 昔は、偏差値は悪いと言われながら、偏差値で輪切りになって、
大学ごとに入る学生の粒がある程度揃っていました。
それが全入時代になって、かなり幅のある人が1つの大学に入るようになった。
できる人にはよりよい教育、足りない人には補うような教育といった具合に、
大学でしっかりと教育しないといけないから大変です。
昭和女子大はマンモス学校と違って、昔から少人数で丁寧に教育することが売り物でした。
以前はしつけが厳しいとかオールドファッションだとか言われましたが、
面白いことに今では状況が逆転して、ポジティブに評価されるようになっています。
まず第一歩は挨拶をきちんとすること
問 実は先日、京都の教育改革を取材したら、堀川高校などでは生徒が本当にきちんと
挨拶をするのに驚かされました。訪問した人が嬉しい気持ちになる。
これは本当は企業にも通じる大事な教育ですよね。
答 昭和女子大でも是非見習わなければなりません。
昔なら、大学生相手に挨拶しろなんておかしいと言われたかもしれませんが、
抵抗なく人に挨拶できるようにすることが結局は本人にプラスになる。
自然と挨拶できるようにして学生たちを世の中に送り出したいと思います。
問 女性の品格教育のようなものがきちんとできたら、
昭和女子大の卒業生は企業から引く手あまたですよ、きっと。
キャリアウーマンでもタクシーに乗ると運転手さんを怒鳴りつけるような人がたまにいますが、
見るに堪えない。
そういう女性が上司になったらどうしようと怯える男性は私だけじゃないと思いますよ(笑)。
答 かもしれませんね。私は正社員だけど、あなたはパート、
私は1部上場企業に勤めているけど、あなたは違うと、口に出さずとも態度に出る。
名刺を見て態度を変えたり、例えばIT(情報技術)長者には愛嬌を振りまいたりと、
それでは品格どころの話ではありません。
私が『女性の品格』を書いたのも、社会で活躍する女性には、強く優しく美しく、
そして賢い真のリーダーを目指してほしいと願うからなんです。
実は学生には男性を見る目も教えたいと思っているんです。
金回りが良くて、プレゼントをたくさんくれて、いいレストランに連れていってくれる男性が
いい男ではない。
威張らず、利害関係のない人にも丁寧で、人の見ていないところで努力をするような
品格のある男性を見分ける目を持ちなさい、と。
品格のない男性にチャラチャラしていると軽んじられるだけ。
一目置かれる女性になってほしいですね。
20歳になるとオバサンでは野菜と同じ
問 反対に男性側の「女性を見る目」についても書かれていましたね。
答 男の人はうわべに騙される。
どうしてこんなに立派な男性がこの程度の女性を選ぶのかと驚かされることがあります。
問 女性は美を追い求める力が強いので、化粧していつもきれいにしていますから
、外見に騙されちゃうんですよ。
実は私なんか、女性というのが生物的に男を“騙す生き物”なのではないかと思ったりする(笑)。
答 それは騙される方が悪い(笑)。
冗談ではなく本当に、男性にも女性の品格を見分ける目を持ってほしいですね。
男性も女性も互いに品格を求め合い、アプリシエートし合うことが大事だと思います。
最近、学生が20歳になると「どうせ、もうオバサンだから」と言ったりするんです。
肌に水分がなくなったら終わりでは、野菜や花と一緒。身だしなみを整えることは大事ですが、
外見以上に大切なのは中身です。
「私なんて」とか「どうせ」とかいう投げやりな言葉からは品格は生まれませんし、
人間としての成長もありません。
失敗はするけれど次はうまくやろう、少しでも自分を磨き、人のためになることをしようと
する努力の大切さを教えていきたいと思っています。
問 男女を問わず、昔の日本人には現在の私たちより品格があったのではないかと
いう気がしています。
司馬遼太郎が言っていますが、第2次世界大戦前後の日本は理念、理想というものを失い、
精神的に不安定な時期にありました。
その時代に青年期を生きた人たちに教育された子供世代が、
今の日本社会の中心にいることが、日本に品格が乏しくなった原因ではないかと思います。
不祥事を起こす企業経営者には品格のかけらも見えない人がほとんどでしょう。
答 私も団塊の世代で、そう言われると忸怩たるものがあります。
私たちの世代は自由に育ち、友達親子みたいなものができて、個性の発揮、
個性の発揮と言って生きてきました。
それはそれで良かったと思うのですが、この年になってみると、
個性を発揮するにはまず基礎が必要なんだと痛切に感じるようになりました。
それを今の世代にどう伝えていくか。難しいけれども、大事な問題です。
品格のある人を切り捨てるから企業の不祥事が生まれる
問 戦後、日本は米国の文化を大量に吸収しましたが、マイナス面も大きかったと思います。
例えば、成功者を称賛する米国文化をうわべだけ取り入れると、
結局、ホリエモンみたいなもので終わってしまう。
日本にはもう少し、武士道のような気概が必要なのではないでしょうか。
答 アメリカンスタンダードがグローバルスタンダードではないんですよね。
企業のあり方にしてもそうで、儲ければ何をしてもいいという米国流では、企業の品格が疑われます。
ただ、武士道は素晴らしいと思いますけど、女性を大事にしないのが非常に残念。
差別というのは最も品格のない行為です。
本当に品格のある人というのは、人を性別や学歴、肩書きで差別せず、
他人の立場を思いやれる人だと思います。
言い換えると、品格は真のリーダーの条件とも言えるでしょう。
部下を思いやって育てないといけないわけですから。
中間管理職、マネジャーは品格がなくても務まるかもしれないけれど、
リーダーは品格がないと務まりません。
最近は中間マネジャーみたいな経営者が多いと言われますが、
サラリーマンは出世のために上だけを見ているから、それがDNAになってしまい、
男性の品格がどうのと言っていたら生き残れないということではないでしょうか。
けれど男性でも、本当のリーダーは品格があって、あこぎなことをせず、
きちんとしたポリシーを持っているものです。
今の企業はそうした人を切り捨てるから、会社の品格が下がるんだと思いますね。
企業の不正もそうです。自分一人が正論を言っても体勢は変わらないから
長いものに巻かれろという考え方は良くない。
日本が太平洋戦争に突入したのも、上層部が空気に流され、言うべき立場に
いる人が言うべきことを言わなかったからです。
あえて言うべきことを言う勇気、倫理観を持つことは、とても大事なことです。
それが男女問わず人間の品格であって、企業の品格につながるのだと思います。
< 以上 抜粋 >
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